都市とRomance

ワンネス

Rooftop

紡いだ言葉が胡散臭くならないようにと思う

綺麗な言葉で纏めたくないと思いながらも

それでも、噛み締めたい過去がある

愛を込めて、今と未来を、君へ

 

出会ったのはたまたまのことだった

軽めの会釈ととりあえずの乾杯

交換したinstagram

突然来た「遊びたいです!」のDM

みんなで遊ぼうね、なんて返した気がする

君はわたしに一目惚れしてくれたと

聞かされたのを覚えてるよ

あまりにも幼く見えた君だったから

わたしは鈍感なまま

たまに遊んだり、連絡を取ったりしていた

わたしに好意を抱いてくれているなんて

全くわからなくて

ちゃらんぽらんに毎日を過ごしながら

でも確実に君が可愛くて仕方なかった

 

数年ぶりに一人暮らしをする部屋が決まる

高いビルの赤いライト

窓からランダムで輝く光たち

屋上に登るとこれらが見えた

君が引っ越しの作業を手伝ってくれた

笑顔のまま過ごしたら

あっという間に終電を逃したのを覚えてる

 

触れられたとき

君は緊張していたように思う

本当にごめんと思ったけど

わたしはもう心底うんざりしていて

温かい人、としか記憶に残らなかった

それでも温かかったその感覚が拭えなくて

何度も考えた

それでも、答えは出なかった

 

どうしてこんなに一生懸命

わたしを求めてくれるのかわからなかった

こういうことが運命なら

わたしはそんなことは知らなかった

 

わたしが欲しがった

引っ越し祝いだと言って渡してくれた

バスタオルとクイックルワイパー

まだ学生だった君は

それすら捻出するのも大変だったと思う

バスタオルに付いていたタグを

ハサミで切ろうとしたけど見当たらなくて

君が格好つけてライターを片手に

「任せて」なんて言うから

焚いたあとにお喋りをしながら笑いあった

そのいとまに申し訳無さそうな顔で

「ちーちゃんに謝らないといけない事がある」

そう言うから身構えた

ヘラヘラしながら言ってきた

「バスタオルちょっと燃えちゃった」

二人でばかみたいに笑いあった

 

なかなか答えが出ないわたしと

宙ぶらりんな関係をしばらく過ごして

君は俯いて頭を抱えながら苦しそうな顔で言う

「そろそろハッキリしてくれないとしんどい」

 

気付かされた時だった

苦しい思いをさせてごめんねと思った

言い訳をするなら

もうすっかり疲れ果てていて

大切なものを増やしたくなかったんだ

 

答えを出すわたしがいた

一緒に居たかった

支え合いたかった

笑い合いたかった

君が言うと、意味が変わる言葉たちに

真正面から撃ち抜かれた

聞いたこともないくらいピュアな

「愛してる」が

初めて、心底、愛されてるとわかった時だった

それでもわたしたちは他人だから

心の摩擦を埋めあって

わたしの足らない部分でぶつかり合ったり

君の優柔不断なところや

おざなりにするところを全部否定して

悔しいと泣かせたこともあった

わたしは立派な人間ではないけど

君はすぐに謝罪をし

目覚めた朝には変わっている姿を見せてくれたね

 

わたしの正義があったはずだった

わたしは君のことを大切にしたかったはずだった

わたしは、わたしは

やっぱり立派な人間ではなかった

そして覚悟を持ちきれなかったわたしは

静かに

君を裏切った

 

作り上げたパズルを壊すのは簡単で

わたしはちゃらんぽらんで救いようのない人間だと

ようやくしっかり自覚した

持病が要因なことも事実だったけど

わたしは出来るだけ

もう、なにかのせいにするのはやめたいと思った

それでもわかってほしい部分もあった

双極性障害がどのような逸脱行為や言動を

繰り返すことが

どういうことを指すのか

わかって欲しかったけど

それも、もう諦めた

いや、辞めたのか

 

ひたすらノートにペンを走らせた

その文字列は決して綺麗ではなかった

痛々しい言葉たちの中を探してみると

わたしはわたしのことを殺そうとしたと

そう思えるものもたくさんあった

 

それほどまでに悩み、落ち込み

君をどん底に突き落とした結果

わたしは歩くことすら

手巻きのタバコを巻くことすら

喋ることすら

笑うことすら

何もできなくなった

 

大切なものたちも離れていった

こんなにも美しいひとを裏切ったわたしがいた

誰しもの特別になる君をどん底に突き落とした

凱旋歌を歌う君の未来をわたしのせいで遠ざけた

そして本当の孤独を初めて知った

本物のヘイトを初めて知った

精神病棟では死んだ目をして過ごし

幾度となくノートにペンを走らせては

自分を根底から否定し、脅し続けた

 

それでも、ずっとそばにいたんだ

 

わたしのことを

なんにも知らないのに

それでもわたしの心に

土足で入ってきて

目一杯傷つけて

やっぱり

なんにも知らないのに

全否定する人もたくさんいる

そんな状態になりながらも

それでもいい

それでも、と

これがカルマなら背負ってく覚悟を持たないと、と

償いと愛を

君が望むまで与え続けたいと

心を殺して

透明人間でいることを選んだ

 

そうしてずっと、そばにいたんだ

 

何度だって謝りたくて

何度伝えてもまだ追えない

いつまでも伝えたい

一生をかけて後悔したいとすら今も思う

 

終わりを迎えたあの時から2年

どれだけ月日が経とうと

変わらないものもあれば

変わったものもある

どれもこれも精一杯受け止めて

わたしはわたしらしさを

君は君らしさを

ようやく思い出せたかもしれなくて

わたしは未だに自分を脅し続けながら

美しい獣の言葉を借りるなら

”生まれ変わるなら生きてるうちに“

それを体現することが出来てるんだろうか

未だに怖いんだ

わたしは変わった?

 

甘いことを尋ねてもいい?

また、あの頃のように「おいで」と言って抱き締めてくれる?

名前を呼んで、また愛を囁いてくれる?

二人でいられたら何もこわくないとまた笑ってくれる?

 

まるで二人だけの世界に変わったら

一生を掛けて幸せにしたいから

離さないで

信じ抜いて

わたしを

わたしだけを見ていて

こんな言葉を君に向けてもいい?

 

口に出せずにいたけど

ずっと

こうなることも

君が気づいてくれることも

わたしを愛してくれてることも

わたしの魂はわかっていた

 

口になんて出来なかったけど

ずっと待ってた

また聞けた「愛してる」には

ひまわりの花を添えて

手紙を書こうと思った

 

バラバラになったピースを集めて

またやり直そう

1つ目のピースを一緒に探そう

パズルに映るのは東京の夜景かな

ひときわ明るいのは東京タワーで

以前暮らしていたマンションの屋上からは

なんでも見えた

覚えてる?

 

キラキラと光る東京の光を見ながら深呼吸する

 

一生を賭けてでもよかった

隣にいれたらそれでよかった

それを越えてやってきた

幸せに

身を委ねながら泣くのを堪え

震える手をこれでもかというくらい握り締め

奥歯が欠けるくらいの思いで

まだ泣かないで待ってるの

 

また輝く光たちを見る

あの頃みたいに雫が反射するのを眺める

イヤホンの端と端を繋いで

雨の中の目黒駅付近を歩いた

流れる景色は君にどう映ったかな

わたしには宝物みたいに見えたんだよ

 

”まるでJewelry shop

眩いCity light

あともう一本だけ吸いたい“

 

優しい嘘であれば君にあげたい

君を傷つけたくない

幸せの屋上へのぼって龍雲眺めたい

思いの丈はここにずっと綴っておくから

いつまでも、いつでも確かめて欲しい

 

またわたしの歌を歌ってくれる?

その姿で胸いっぱい幸せになりたい

そして過去を見つめて泣く女性は朽ち果てる

信じるべきは自分自身と

今、この時だ

 

愛を込めて、過去じゃなくて、今と未来を

君に