都市とRomance

ワンネス

Rooftop

紡いだ言葉が胡散臭くならないよう

綺麗事だけじゃ許されない世の中だから

愛を込めて、君へ

 

出会ったのは突然のことだった

君はわたしに一目惚れしてくれたようだった

あまりにも幼く見えた君だったから

わたしは鈍感なまま

たまに遊んだり、連絡を取ったりした

わたしに好意を抱いてくれているなんて

全くわからなくて

ちゃらんぽらんに毎日を過ごしながら

でも確実に君が可愛くて仕方なかった

 

数年ぶりの一人暮らしの家が決まる

高いビルの赤いライト

ビルにランダムで輝く光たち

屋上に登るとこれらが見えた

君が引っ越しの作業を手伝ってくれた

笑顔のまま過ごしたら

あっという間に終電を逃したのを覚えてる

 

触れられたとき

君は緊張していたように思う

本当にごめんと思ったけど

わたしはもう心底うんざりしていて

温かい人、としか記憶に残らなかった

それでも馴染んだ感覚が拭えなくて

どうしてだろうと考えても

答えは出なかった

 

どうしてこんなに一生懸命

わたしを求めてくれるのかわからなかった

 

わたしが欲しがった

引っ越し祝いだと言って渡してくれた

バスタオルとクイックルワイパー

まだ学生だった君は

それすら捻出するのも大変だったと思う

バスタオルに付いていたタグを

ハサミで切ろうとしたけど見当たらなくて

君が格好つけてライターを片手に

「任せて」なんて言うから

焚いたあとにお喋りをしながら笑いあった

そのいとまに申し訳無さそうな顔で

「ちーちゃんに謝らないといけない事がある」

そう言うから身構えた

ヘラヘラしながら言ってきた

「バスタオルちょっと燃えちゃった」

二人でばかみたいに笑いあった

 

なかなか答えが出ないわたしと

宙ぶらりんな関係をしばらく過ごして

君は言う

「そろそろハッキリしてくれないとしんどい」

 

気付かされた時だった

苦しい思いをされてごめんねと思う

言い訳をするなら

もうすっかり疲れ果てていて

大切なものを増やしたくなかったんだ

 

答えを出すわたしがいた

一緒にいたかった

支え合いたかった

笑い合いたかった

君が言うと、意味が変わる言葉たちに

真正面から撃ち抜かれた

 

ずっとそばにいた

ずっとそばにいる

 

作り上げたパズルを壊すのは簡単で

わたしはちゃらんぽらんだとようやく自覚した

持病が要因なのもあるけど

わたしは出来るだけ

もう、なにかのせいにするのはやめたいと思った

 

ノートに書き出す文字列は

決して綺麗ではなかった

痛々しい言葉たちの中を探してみると

わたしはわたしのことを殺そうとしたんだと

そう思えるものもたくさんあった

 

大切なものも離れていった

わたしのことをなんにも知らないのに

それでもわたしの心に

土足で入ってきて

目一杯傷つけて

なんにも知らないのに

全否定する人もたくさんいる

そんな状態になりながら

それでもいい

それでも、と

透明人間でいることを選んだ

 

終わりを迎えたあの時から2年

どれだけ月日が経とうと

変わらないものと変わったもの

どれもこれも受け止めて

わたしはわたしらしさを

君は君らしさを

やっと見つけたかもしれないから

あの頃のようにベッドに倒れ込み

優しく抱き寄せてくれる?

 

まるで二人だけの世界に変わったら

一生をかけて幸せにしてあげるから

離さないで

信じ抜いて

わたしを見てて

 

ずっとわかってた

こうなることも

君が気づくことも

わたしを愛してくれてることも

 

ずっと待ってた

また聞けた「愛してる」には

ひまわりの花を添えて

手紙を書こうと思う

 

バラバラになったピースを集めて

またやり直そう

パズルに映るのは東京の夜景

ひときわ明るいのは東京タワー

以前暮らしていたマンションの屋上からは

なんでも見えたんだ

 

キラキラと光る東京の光を見ながら深呼吸する

思考は具現化するんだと改めて知った

 

一生をかけてでもよかった

隣にいれたらそれでよかった

 

君が望むなら

ボディガードにもなるしベビードールにもなるよ

 

輝く光たち

雫が反射する

イヤホンの端と端を繋いで

雨の中の目黒駅付近を歩く

流れる景色は君にどう映ったかな

わたしには宝物みたいに見えたんだよ

 

まるでジュエリーショップ

眩いcity Light

あともう一本だけ吸いたい

 

もう嘘はつかないから

過去ではなく今を

名前のない感情

あの夜のことは一生忘れないと思う

そして間違っていないと何度でも諭してあげたい

 

今になっても感情のコントロールが不器用だから

伝え方も言葉選びも美しくはなかった

例えるなら精一杯だったね

そんな貴女は苦しそうに初めて他人にこんなにも

分かってほしいと

伝われと

願いながら

痛々しい言葉の群れをわたしにくれた

 

どうしたって上手になんて出来ないと泣く

 

「上手に出来なくてごめんなさい」

そんな言葉をわたしに向けるな

そんな言葉で自分自身を傷つけるな

そんな言葉を吐いて泣くな

 

きっと言いたくなかった言葉の群れを受け止める

当たり前だ

わたしが救った命だ

わたしが貴女を一生かけて救い続けるって

改めて思った夜だった

 

わたしのことだけは

わたしにだけは

5つ目の感情を教えてほしい

 

iPhoneが壁にぶつかる音

荒い息遣い

高ぶる感情

大きな声

まるで美しい獣だった

 

長い時間考えながら聞いていたんだよ

 

伝えたごめんねの4文字

千尋なら分かってくれると、届くと分かってた」

 

 

いつまでも

いつでも

わたしになら

どんな貴女でも嫌いになんてならないから

そんなに謝らなくても

分かってる

手をつないでいて

美しい獣 part.2

「なに?」

千尋のことが好きすぎて、ずっと見てたいの」

 

彼女が昔家族として過ごしたミシカという猫と同じ目で言う

 

火葬時には赤い薔薇で埋め尽くして、1番派手なプランでさよならを伝えたらしい

 

彼女らしいと思った

 

赤い薔薇を背中に背負い

蝶々が舞う背中

それは男達を魅了した

 

喜怒哀楽以外の愛の形をした形容できない何か、それが美しいということを初めて知った

わたしに恋をし続けて東京に出てきてくれたことを胸に抱いて生きると決めた

 

美しい獣に見えた

 

自ら壊すことしか出来なくて

わたしに一生恋をしていると告げるその美しい獣は

ヤマアラシのジレンマのような気持ちでいたと伝えてくれた

 

「本当のことを言ったり、本当に抱きたいと思ったけど、壊したくなかったから何一つ上手に出来なかったの」

「ごめんね、千尋

 

昔は寡黙すぎるほどだった美しい獣は

今となっては五月蝿いくらいよく話す

 

「ねえ、千尋

「ちょっとは黙ってられないの?」

千尋となら一生喋っていたいの、もっと千尋を教えてほしいしあたしを知ってほしいの」

「かわいいひとね」

 

傷だらけの腕が格好良く見える

そんな人は初めて見た

伏目が切なげでゆっくりと瞬きをする

ボディピアスがプライドで

ころころと男に翻弄されて

いつもわたしに叱られて

おどけてみせながらありがとうと言う

 

千尋、天才に見られたければ天才の真似をしろってルイが言ってたから千尋の真似をしてるよ」

 

彼女は美しい獣だ

 

泣きながら本当にごめんねと繰り返す

何度だって謝ってほしい

何度だって信じなおさせてほしい

 

彼女は美しい獣だ

 

押し殺す感情が崩壊して

どこかに行ってしまったあの頃の彼女と

メールをよくして電話もたまにしたらしい

酷いいじめを受けながらしたたかに生きた

ピアッシング自傷行為だったと教えてくれた

枕に顔を押し付けた4畳の部屋は暗かった

押し殺す感情と声と、それから、ね

それらを掻き分けて聞き取ったのはわたしだけだと思う

冷えた目つきの奥に子供みたいな笑顔が見えたの

 

 

誰がなんと言おうと彼女は美しい獣だ

 

 

いつまでも彼女が知らないことや

知ることが出来なかったことや

わからないことを説き伏せている

 

 

ボロ雑巾みたいになって帰ってきた数年前

 

ここで変わらないと一生変われないと覚悟をさせた

これ以上ない愛と今までにない叱咤をした

わたしが与えられる全てを彼女に与えた

ひとりぼっちにさせた時の荒れた部屋を笑い飛ばした

 

自分と本当に向き合ったのは初めてだったと思う

自分を根底から否定したのは初めてだったと思う

それでも、彼女は美しい獣だから

自分で自分を本気で脅した

 

 

「絵美、いっぱい笑うようになって嬉しいよ」

 

千尋

 

反芻する

 

「ありがとう」

 

反芻する

 

生きていることがこれほどまでに美しいなんて知らなかったでしょう?

一分でも一秒でも長く生きたいと思うなんてことが起きるなんて思わなかったでしょう?

もう壊す必要もないことも、大切の仕方もわかってきたでしょう?

 

 

わたしの知る限りの全てを教えてあげる

 

 

傷だらけな左腕が真っ赤な薔薇まみれになって

昔家族だったミシカと同じ目をして

わたしに問い続けてほしい

 

 

「どんな絵美でも愛してる?」と

そうしたら何度でも答える

「絵美はわたしにとって美しい獣だよ、伝わる?」と

 

 

したたかな美しい獣の話

人魚

歌う様が格好良くて惚れ惚れしていた

青いショートヘアが良く似合い

コニャックを傾けてガハハと笑う

ステージの上で踊って歌って

目線を合わせてお互い笑う

そんな歌姫だったあなたは

わたしにたくさんの音楽を教えてくれた

 

わたしのアイディンティティを確立するもののひとつなあなたは

わたしへエフェクトをかけるのが上手くて

何もかもが可愛くて

何もかもが格好良かった

華奢ですらっとした身体つきも似合ってて

個性的だと言われるその声も似合っていて

まるで初恋のような気持ちだった13歳

 

細い指にお揃いのリングをつけて

ママチャリに2ケツして

海沿いを走る

一緒にメロディーを奏でて

やっぱり歌姫なあなたは

踊って笑って歌う

 

わたしの知らないところで愛を育んで

結婚も離婚も経験したあなたは

昔とまったく変わらない

コニャックを傾けてガハハと笑う

 

悲しいところを見せない強がりなあなた

わたしだけが知ってるあなた

焼きそばに目玉焼きを乗せて

「食べな」とぶっきらぼうで優しいあなた

 

ずっとこの初恋を忘れない

あなただけが、わたしの希望だったあの日を

わたしだけでもいいから

忘れないでいたい

反芻

東京なんて大嫌いだ

気持ち悪いほどの悲しさや虚しさや孤独をみんな抱えすぎていて

いつもの場所でタイムラプスを回すと吐きそうになる

反してわたしの感受性にピンポイントでささる光たちがうつくしくて

皮肉だなと笑う

目が回るのに何度もこれをやりたくなる

もう嫌なのに何度もここで悲しくなる

東京なんてだいきらい

 

ー彼女は美しい獣だった

今はあの時の不器用な彼女とはまた違う彼女になった

「どんな絵美でも美しい絵だから、うん、名前に意味がないことを気にしているならわたしがつけてやるから気にすんなよ、泣くの?うん、絵美の名前の由来はね、美しい絵だよ」

千尋

彼女は美しい獣だった

今は幸せを自ら壊すことをやめた彼女はよく笑う

千尋

反芻する

ずっとわたしに恋をしていていいよ

一生笑わせてあげるから

たくさん絵美を教えてよ

 

(愛してる)

37.8℃

2月、自宅の窓から入る太陽はあなたに強く抱きしめてもらった時ほどあたたかくて、草木が枯れたことや花瓶の花が弱ったことも忘れさせてくれるんだ。

 

あなたに抱かれることはどんなドラックよりも強い多幸感とセロトニンラッシュと、そして言語化出来ない束縛や支配したような気持ちよさで、比べるものはわたしの知る世界ではないくらい幸せで、こんな気持ちになることは今までなくて、最初で最後だと確信しながら愛がここにあることに胸がいっぱいになりながら、生きていることのかけがえのなさを実感できるの。

 

感じてる?

確かなのはこの体温。

あったかいね。

ハッピーだね。

ずっとその笑顔でいてね。


滑らかな肌が吸い付くように絡まって、君が苦しそうなのにウットリとした目でわたしを見るその様に愛を感じて、シロみたいに笑いながら泣くの。

 

よく覚えてる。

初めて触った肌の感触。

重なる質感が同じようであったこと。

それがこんなに長い月日を経ても変わらない。

そういうことがどういうことかわかる。

 

"形あるものに意味はないって2人で気づくまで"

 

ータイトルはわたしが知っているこの世界で1番愛しい彼が考えてくれたもの。

「ねえ?なにがいいと思う?」

「んー、なんだろ…。微熱、は?」

「(愛してる)めっちゃいい!それにするね。ありがとう。」

「それか、37.8℃は?」

「(愛してる、愛してる)それにする。」

 

 

あなたの笑顔がわたしの太陽なら、わたしはあなたの手元足元今未来そして過去をも照らす月でありたい。

 

 

"You are my perfect girl on the moon, 夜も照らしてくれる"

合ってる?

ありがとう。

こう歌ってくれたから、わたしはわたしのままでいてもいいんだと思えたよ。

 

(愛してる、愛してる、愛してる)

息吹き

わたしが生きている意味を教えてくれるものは多々ある

 

それは笑っている時だったり、泣いている時だったり、あなたと触れ合う時だったり、君と、はたまたまた別の誰かと意思を交わし合い分かり合える瞬間や分からないことを分かろうとする瞬間だったり、踊っている時や、魂を解放するときだったり、昔から歌うのが好きなわたしはこの独特な声で適当に覚えているすきな歌を歌っていてあなたが素敵と言ってくれる時や、まだまだある

 

死ぬことと言うのは、肉体が消滅し、わたしは魂は見えないから魂をも連れ去っていってしまうものだと思っていた

 

そんなことは違ったと感じた

 

記憶というのは凄いもので、なんでもない、または印象的ななにかをしっかりと記憶していて、例えば母が生前の際に残した言葉をはっきりと覚えているし、まあ魂をも連れ去ってしまったとしても記憶や香りや口ずさんでいた歌や「ママ寂しくてうさぎになっちゃいそう」と言っていたその言葉をしっかりと覚えているから、わたしは死んでいった大切な人たちの形を縁取るなにかしらをしっかりと感じながら呼吸する

 

生きていることはかけがえのないことで、破壊は再生であって、命は巡るものだと思う

感じる愛は、しっかりとここにあって、わたしは、その愛の形を鼻で吸い上げる上質なコカインよりも強く吸い上げ、ハードドラッグよりも強いエフェクトで感じながら深く呼吸をして整える

 

大丈夫というあなたの温かいし柔らかいし、なのにあっけらかんとした様は見惚れるくらい立派であって気持ちが良くて、まるで初夏の風が優しく吹き込んできたような気持ちになる

 

あなたや、また別のわたしが愛している死んでいった友達や母や、または他の誰かの優しさの縁取りを人差し指でゆっくりとなぞりながら1分でも1秒でも長く生きたいと強く願うことが増えた

 

上手に生きられないことは昔からわかっているから、もう一度、もう一度、胸に手を当て言霊にのせて、「大丈夫」と繰り返す

 

いくらでもかかってこい

どんな苦難や困難だって乗り越えてみせる

わたしは愛のために生きていたい

わたしは、あなたの笑った顔やわたしがうっとりしている顔を見るあなたのその目や強い眼差しや湿度はないのに吸い付く肌がもう生きることを終わりにしてもいいくらいのエクスタシーが効くあの夜よりもしあわせな一時を抱えながら、また深く息をする

 

大切にしたいものはなんですか

守りたいものはなんですか

未来なんて見えないのだから、イマ、この時を立派でなくてもいいから、自信を持って腹を括るんだ

わたしなら出来るし、わたしなら、わたしならと信じることを繰り返す

出した答えに正解と不正解だけしか存在するわけではないから

0か100かでなくてもいいんだから

行き先なんてそもそも見えなくてもいいんだから

約束をしようか

自分を信じて、と

約束をしようか

決めつけて未来の可能性や未知な奇跡を信じないことはしないと

約束をしようよ

大丈夫って

 

神様に触れるわたしの温かい手は

手を当てるだけで

手当てができること

信じようか

何度だって救われる言葉たちを

 

 

込み上げる不安感を押し殺して戦うこと

込み上げる気持ちに身を委ねて流れていくこと

それが今できる最高のイマだということを

 

 

意地になって無理矢理でも笑みを浮かべ

奥歯が欠けるくらいの悔しい思いをバネにして

あの骸骨に肉付けを